いつか涅槃で暮らしたい

球体関節人形の手にほおずりする女性 よしなしごと

 こんにちは、澁澤つららと申します。澁澤竜彦の「澁澤」に、「つらら」はひらがなです。好きなものは球体関節人形とトレーシングペーパー。墨汁の匂いと古本の匂いに親しみを覚えます。

 ぱっと思いつく好きな作家は、T.カポーティと村上龍と、それから谷崎潤一郎でしょうか。現代のミューズは、椎名林檎様とmillna様とモンゴルナイフ様です。影響を受けたのは、オーブリー・ビアズリーとカイ・ニールセン、それからCLAMP作品です!

 もちろんインターネットのことも大好きですよ! ただ、最近インターネットを見ていると、考えてしまうことがあります。「みんなが心の中に安全な楽園を持てればいいのに」なんて、独りよがりなことを。

 インターネットが即ち楽園だった時代が終わったいまだからこそ、勝手ながら考えてしまうんです。

 よくある自分語りで恐縮なんですけれども、私は筆を置いたり取ったり、名義を分けたりしてふわふわと活動してきました。

 たとえば、別名義でイラストのお仕事を4年ほどやらせていただいております。その前の名義では、小説やエッセイを書いておりました。友人の同人誌に寄稿したり、自分で本を作ったりもしていましたね。

 そんなことは本題じゃないんです、だって「澁澤つらら」には関係ありませんから。ただ最近ふと、純粋に疑問に思って。私はなぜそのように、曖昧にただよって生きてきたのだろう、と。

 もちろん、過去の自分のことなんて分かりようはありませんよ。過去に「なぜ」って問いかけることそれ自体、ナンセンスかもしれません。昔の己は他人のように、あるいは他人よりも遠い気すらしています。

 でもあえて立ち返ってみたとき、私は自分だけの涅槃が欲しかったのだと気づきました。かつては若く孤独だったので、「インターネットにくらい、自分の居場所があってもいいではないか」……という動機で、あれこれ手を出していたのだと思うんですね、おそらく。

 いま思えば私は元来、目立ちたい性格ではありませんでした。それに世間的な「成功」は身の丈に合わないと感じていました。とはいえ、若い頃って自分の感情や気質すらも、勘違いしてしまうものでしょう。

 むかし私は、「自分は承認欲求が強くて傲慢で、役にも立たない人間だ! だからせめて、何か美しいものを作らないと!」という思いに駆られていたんですね。自己嫌悪と焦燥だけが先走って、がんじがらめになって、制作を辞めてしまう。再び焦燥がやってくる。制作してはまた苦しくなる。そんなどうしようもない人間でした。

 その実、本当は夢や野望と呼べるようなものなんてなかったんですよ。空っぽな自己の中で、うんうん悩んでいただけです。承認欲求も薄い方だったんじゃないかとすら思います。寂しがり屋だっただけ、というか。

 なんというか……実際は、ただただ小さい人間だったんです。案外、器が小さいのも悪いものではないですよ。器の大きさが身体に馴染むことそれ自体が嬉しいと、個人的には思いました。ああ大人になってよかった。

 突然ですが私は今年2025年の2月から、インスタントな涅槃で暮らそうと決めました。もう大人だし、器は小さいままでいいし、このまま気楽に制作しようと思って。

 まず2月の初旬に、お仕事とは全く別の、自分らしい絵を描き始めました。目も当てられない大量の失敗作があります。 そしてふと思い立ち、15年前から憧れていたネオブライスドールをお迎えしました。

カスタムネオブライスドール「アーバンフェアリーエリー」が座っている写真
ネオブライスの「サテンちゃん」です

 夜な夜な手探りでカスタムし、ドールサイズのお洋服を作っています。こっちも試作と失敗作だらけで、写真映えするものなんてまだひとつもありません。いつになったら完成するのでしょう。

カスタムネオブライスドール「アーバンフェアリーエリー」が座っていて」スリープアイになっている写真

 でもね、これも大人になってわかったんですが、試行錯誤って楽しいんです。未完成って楽しいんです! 失敗作や工具や画材に溢れるめちゃくちゃな部屋の、なんと愛おしいことか!

 いつかは「ここがほんとうの涅槃だ!」と誇れるような場所に住みたいものです。しかし現実には実力ですとか、経済力ですとか、いろいろ制約がありますでしょう。その他の外的要因もあります、もちろん。体力にも乏しいですし。

 若く青かった頃、あらゆる障壁はすなわち絶望に感じられました。しかしなぜでしょうね、いまはあらゆる制約が、ときどきむしろ愛おしいと感じるんです。限界があっても、どうしても諦め切れません。即席でも暫定でもいいから、等身大の楽園が欲しいのです。

 そうしてしばらくひとりでもがいているうちに、この過程をみんなにシェアしたいと思うようになりました。

 ここは良質なコンテンツで溢れる巨大なインターネット。だからこそ、試行錯誤の記録や失敗例って、幾つあってもいいと思うんですよね。あればあるだけ、いつかどこかの誰かの役に立てる可能性が上がります。

 自分の部屋に、そしてインターネットにも、即席の涅槃を作りたい。

 例えばブライスドールのカスタム記録から、Affinity Desingnerで無理やり縦書きの本を組む方法まで、「自分でなんとかした記録」をここに残していきたいと思います。

 ……ハウツー関連の記事はもう少しまともな文体で書きますので、失敗例だけが気になる方も、どうぞご安心ください。

 それから読みたい方がいらっしゃるかは疑問ですが、このように自分の言葉で日記のようなものも更新していきます。

 私ってときどき何かの病気なんじゃないかというくらい、くだらない文章を書くのが好きなんです。根暗なのにおしゃべりなんですよね。気の合いそうな方はぜひ、そちらもときどき覗いていってくださいな。

 つめたい孤独を愛するあなたにも、いつかあなただけの楽園が到来しますように。ここで祈っています。ではまた。

澁澤つらら

澁澤つらら
サイト管理人
澁澤つらら

ネオブライスのサテンさんと暮らしています。1/6ドールのハンドメイドから、力業でAffinity Designer を使う方法まで、自分でなんとかしたことをシェアします。好きなものは球体関節人形、トレーシングペーパー、古本の香りとカレー。イラストも描いています。

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